【記者ノート】4月9日 ダル、大リーグ公式戦初先発 「試行錯誤」が生んだ進化
「体と精神がアンバランスの状態だった…」 会見で伏し目がちな表情を浮かべたダルビッシュ有投手(26)の姿を見たのは、日本ハム時代の取材を通じても初めての体験だった。今季から米大リーグ、レンジャーズに移籍し、公式戦初先発となった4月9日のマリナーズ戦(アーリントン)。記念すべき初勝利を手にしながらも、六回途中5失点、5四死球という内容にうなだれるのは無理はなかった。 大リーグ1年目の今季は初登板に象徴されたように、右腕にとって「試行錯誤」の連続だった。◇ ◇ 今年は2度にわたり、レンジャーズの春季キャンプと、大リーグ公式戦を米国で取材した。屈強な大リーガーと並んでも遜色(そんしょく)のないダルビッシュの姿は、何年も前から大リーグにいたのではないかと錯覚するほどの存在感を放っていた。しかし、右腕が大リーグの環境に適応するのは、やはり容易ではなかった。 苦悩の跡がうかがえたのが滑りやすい大リーグ公式球への対応だった。オフから大リーグ公式球を使用して練習していたというが、オープン戦ではボールがすっぽ抜ける場面もあった。大リーグ特有の硬いマウンドも制球を乱す要因として指摘されたこともある。それでも、右腕は冷静に自分をみつめていた。 「自分が求めているから、ここ(大リーグ)に来ている。すべてに適応する以外、何もない」。日本人選手の存在価値を再び証明したい-。その言葉には日本人選手としての矜持(きょうじ)を取り戻すことを決意した「覚悟」を感じた。< 前のページ12次のページ >
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